比喩的な「母」から生まれる「自己」の切り離し

2023年3月天体配置・海王星・火星・太陽・水星アスペクト・金星牡牛座移動

今週は惑星の組み合わせがいくつか起きます。今日の火星とのスクエアをはじめとし、海王星がつぎつぎと印象的な組み合わせを受けます。

Girl in the aqua
Photo by Caroline Hernandez / Unsplash

連続する海王星のアスペクト

その連続する海王星のアスペクトは何を表しているのでしょうか。

惑星同士のアスペクトは複数の要素が組み合わさり、その時に起きる変化が出来事や行動に現れます。ですが海王星は移動するスピードが遅いので、個人の生活に強く影響することは多くありません。ほとんどの場合、社会や時代に溶け込んで背景の「流れ」をゆっくりと映し出す海王星。しかし今週の天体配置を見ると、連続して起きるアスペクトのほとんどが海王星に関係しています。

比喩的な「母」と「自己」の切り離し

世界と存在の「母」・海王星

ネプチューンとして登場する以前の長い歴史の中で、海の神は「万物の母」である女神でした。古代ギリシャの水を司る母なる女神は、その他の女神と同じように、最終的には男性神にとって変えられてしまうのです。[1] ですから占星術の海王星には、万物を生み出す「羊水」としての象徴が色濃く残っています。

ホメーロス「オデュッセイア」の中でオデュッセウスに抱いた恨みを晴らすために海王ポセイドン(のちのネプチューン)は何年にも渡り、彼の帰路に困難をもたらします。力強い海の神のその執拗さは、実は我が子に対する執着であり、その姿は子を守る母性そのものです。すべての存在を生み出す「母」としての海王星のこうした複雑さは星座との関係の中にも現れています。

1世紀のローマの詩人、マニリウスは、浅瀬の岩にしがみつき、繰り返す波に動じない蟹座の「神」は海王星だと歌いました。蟹座は柔らかい腹の中に愛情の対象を抱き、その硬い甲羅でそれ以外すべての存在を除外する様子が、母性の象徴だと言われています。それに対し、マニリウスが示しているもう一つの海王星の星座は魚座です。浅瀬にしがみつく蟹に対して、魚は果てしなく広がる海原に喜びを見出すのです。[2] そこには子を守る懸命な母性とは対照的に、生み出すために全てを受け入れ、深く深く広がる「羊水」としての母性が現れています。

生まれくる「自己」確立を迫られる海王星アスペクト

確かに母性には「母」と「子」の二つの部分があります。子供を持たない人であっても、母を持たない存在はありません。「母」が存在するには少なくとも2つの存在が必要です。そこには現代的な個人主義が通用する隙間がないように見えます。そして、連続する今週のアスペクトで海王星は、原始的な創造を象徴する魚座から、惑星とのペアを組みます。

光を弱めながら、現れる時間も遅くなる月が半月になる14日。[3] 海王星は火星と不安定なスクエアを組みます。火星はこの直後、太陽とも同じ配置を取りますが、そのために日暮の空でちょうど私たちの真上を陣取り、赤々と星の明かりを放ちます。一つ身から二つへと、切り分ける仕事を担う火星。その次の日、海王星は太陽からのスクエアを受けます。惑星の組み合わせの中でもこの二つほど象徴に差がある組は珍しい。生み出すために、物事を形にするのを避けようとする海王星と、それをはっきりと表そうとする太陽の、お互いが圧力をかけ合うでしょう。さらに16日になると、表現を象徴する水星とのスクエアを再び取る海王星。

これらの連続配置は、まるで、生まれる前の赤ちゃんにする職務尋問のように見えます。

もちろん、それに応えるには時間がかかるのです。アスペクトの連続は休むこと続き、さらに、太陽が火星と、そしてその後水星が火星とさらなるスクエアを組むのです。これら、太陽・火星・水星は、海王星と違って、私たちの生活にごく近い惑星ですから、自己表現をするクリエイティブなエネルギーを感じることができるかもしれません。ですが具体的な表現に至るには時間がかかります。海王星に関する今週の一連のアスペクトは金曜になると、水星が太陽と重なり、新しいサイクルに入ってこの章を終えます。

魚座・海王星はそれ自体がすべてを生み出す「母」を象徴しながら、同時に他者・自分の境界線がない状態、言わば、自分には見えない「自己」も示しています。何かが生まれる。ある人たちにとっては、必ずしも望んでいることではないかもしれません。それでも、繰り返し連続する今週の流動的なアスペクトは、それぞれ個別の表現が現れる前に次の象徴の表現が重なる、深い海水、原始の水そのもの。すでにこの世界に生まれてきた私たちにとって、自らが母となり、どのように自己を育てるか、を問うタイミングなのかもしれません。来週以降の天体配置とも影響しあい、特に個人レベルで徐々に形が現れてくることでしょう。

その他の天体配置・金星の牡牛座移動

これらのテーマのある流れの背後で金星が牡牛座入りします。
海王星のシンボルが強まる今週、金星の優雅さと安定が背景を支えてくれている。これは普通の人にとっても歓迎できる配置です。特にアーティストや表現者にとってはブレークスルーの後押しとなりそうです。

今週は独立独行とはとは違う自己確立を意識することが大切ですね。
海王星が表す無数の可能性とその他の惑星の表す個性は、日々の生活の中で、何を選び何を捨て去るかの手掛かりになることでしょう。


  1. 例えば、リズ・グリーンは Neputune and the Quest for Redemption (1996. Weiser Books. Boston, MA/ York Beach, ME.) の中で海王星の象徴起源を古代神話の中から探り、ローマ時代以降、一般に男性神と考えられている海王星の起源を古代女神の中に見出している。 ↩︎

  2. Manilius. Astronomica. Goold, G. P., Ed. and Tran. 1977. Harvard University Press. Cambridge, MA. London, UK. マニリウスは Sea-god から生まれた星座として「...clinging Crab in the shallows, and the Fishes that rejoice in expanse of water.」と歌っている (II 232)。 ↩︎

  3. 時間表記はアメリカ西海岸時間帯 ↩︎

Subscribe to Horoscope Logos

Don’t miss out on the latest issues. Sign up now to get access to the library of members-only issues.
jamie@example.com
Subscribe